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「三島由紀夫vs東大全共闘」感想

観たきっかけはなんとなく面白そうだなと思って。三島由紀夫の作品はタイトルを知ってるだけで読んだことがなかったし、「全共闘」とは?レベルの知識のなさだったので軽く調べてから観た。劇中、東出のナレーションと注釈で説明があるので親切設計。

 

 

「右vs左」、「保守vs革新」

それぞれ正反対の意見を持って討論に挑む東大全共闘の皆さんと三島由紀夫

実際の討論の内容は哲学的で、概念を用いて話すことが多くて、特に東大生側のターンなんてさっぱり分からんことが大半。それに対して三島はすごく話し上手で、ユーモアを交えつつ、説明も分かりやすいので聞き入ってしまう。

 

討論会なので正解があるわけではなく、東大生側は三島の弁論で少しでもおかしな点があればつついてやろうっていうのが見えるけれど、対する三島は学生を諭すというか、終始落ち着いていて、丁寧に自分の意見を主張する。

もっと火花飛び散る熱い展開を想像していたら、意外にそういう風にはならず、東大生側も三島も、互いの意見にしっかり耳を傾けているのが印象的だった。

 

なので、学生のうちの1人がつい「三島先生」と敬称をつけて呼んでしまったり、それにつられて三島も笑うシーンなんてすごく微笑ましい。

 

個人的に1番印象的だったのは、三島が学生に対して、「君らが一言、天皇と言ってくれたら喜んで君らの活動に参加するのに」と言った場面。正反対の立場にいるように思えて、実はもっと深い根幹の部分では同じような気持ちを抱いているのが分かった気がした。

 

だからこそ芥正彦が三島のタバコに火をつけるようなくだりがあったんだろうし、討論会の終盤、学生が三島に向かって「一緒に闘ってくれますか」って問いかけが生まれたんだろうし。

それに対する三島の答えが「熱量は信じる」っていうのも熱かった。

 

三島自身、文学者なので「言葉」の力を信じて時にはユーモアを交えて笑いをとりつつ、じっくり丁寧に自分の意見を伝える姿が、映画を見る前に想像していた過激な人物像とはかけ離れていたのでびっくりしてしまった。

 

三島がもしあの時、自殺せずに生きていたら、今の日本を、今を生きる人たちのことをどう思うんだろうとか、つい考えずにはいられない。

 

2020年は三島由紀夫の没後50年。

今年見た中でかなり印象に残った1本だった。

おしまい。